日和見勘定
 簿記のほとんどの勘定は、貸借いずれかの残高となります。資産や損失は借、資本や負債、収益は貸残高となります。
 ところが、規則には必ず例外があるとはよく言ったもので、借残高の時には資産として振舞うくせに、貸残高になると負債になってしまうという、開発者泣かせの天邪鬼が存在します。「当座」や「受託販売」がそれです。
 以下、これらの勘定に関する簡素な覚書です。

当座
 当座預金に担保を設定しておくと、担保の評価額に達するまでは小切手を振り出せるようになります。不渡りを出せば一大事とあって、実務ではまず担保の設定が行われるとのこと。
 その際、当座預金の全口座の合計が借残高である限りは「当座預金」(資産)、ゼロを下回る分については「当座借越」(負債)として処理する方法と、これをまとめて「当座」として管理し、借残高のうちは資産、貸残高となったら負債として処理する方法(混合勘定)があります。ちなみに、インターネットで調べてみた限りでは、実務的には前者を使用することが多いとするサイトと、後者を使用することが多いとするサイトが混在しており、結局どちらもそれなりに使われているようです。
 ここでは「(借越契約を結んでいる)当座預金について、現金で50000を振り込み、仕入80000を小切手で処理した」場合を想定してみます。

A.当座預金・当座借越
当座預金 50000 現金 50000
仕入 80000 当座預金 50000
当座借越 30000

 この場合、資産である当座預金がなくなって、負債である当座借越が発生します。処理は面倒ながらも単純明快ですが、A口座で預金が有り余っていたとしても、Bではマイナスに落ち込んでいた場合、言うまでもなくBの分は借金ですから(利子も発生)、勘定の上では当座預金が残っていても、資産を評価する際には負債があることになります。

B.当座
当座 50000 現金 50000
仕入 80000 当座 80000

 この場合の「当座」は、最初の仕訳の時点では資産ですが、次の仕訳では負債に変化します。

受託販売
 当座勘定は概念的に難しくありませんが、受託販売はどうにも概念が分かりづらい勘定です。処理の流れとしては、以下の通り。
  1. 商品の販売を受託し、商品を受け取ったり保管したりした際にかかった費用(運送費、保管費など)は、相手への貸し(資産)として販売受託勘定で処理しておく。商品は販売を委託されたのであって、購入しているわけではないので、商品勘定や仕入勘定は変化しない。
  2. 商品を売って利益を得た場合、他人の商品を売却したものであるから、売上にはできない。この利益は預かっているものであるので、負債である。こちらは負債として販売受託勘定で処理しておく。
  3. 費用や手数料などを差し引き、代金を委託先に送金した時点で、販売受託勘定は差し引きゼロになる。
 つまり、「これ売って」と頼まれた時点では、まだ帳簿上の取引とはみなされず、売買に伴う代金の動きがあってはじめて、帳簿上の取引とみなされています。
 「商品を受け取り、その際に雑費1000が生じて現金で払った。商品を25000で売却して小切手で受け取り、ただちに当座預金とし、手数料2500と雑費を差し引き、残りを小切手で渡した」場合であれば、

販売受託の処理
販売受託 1000 現金 1000
当座預金 25000 販売受託 25000
販売受託 24000 当座預金 21500
受取手数料 2500

 これで処理できます。

 委託した側の仕訳は、商品を発送した時点から記入します。「16000の商品を委託し、発送費1000を現金で支払った。その後、受託側から明細が届き、売り上げ代金25000から保管などの費用1000、手数料2500を差し引き、残った20500を小切手で受け取り、ただちに当座預金とした」場合であれば、こうなります。

販売を委託した場合の処理(売上勘定)
積送品 17000 仕入 16000
現金 1000
当座預金 20500 (積送品)売上 20500
仕入 17000 積送品 17000

 商品を送った時点で仕入勘定から商品分の値段を減らし、積送品に振り替えています。その後、代金を受け取った時点で売上として処理し、しかも積送品を仕入に戻しています(この仕入勘定には積送時の諸掛1000も加算される)。
 (積送品)売上の代わりに、積送品売買益を使う方法を取るのであれば、

販売を委託した場合の処理(積送品売買益勘定)
積送品 17000 仕入 16000
現金 1000
当座預金 20500 積送品 17000
積送品売買益 3500

 分記法の「商品売買益」と同じ理屈です。