産経新聞「歴史教科書の通信簿」
 2001年時の産経新聞の教育Webサイトには、自社グループ会社「扶桑社」の教科書を不当に高く評価していた記事がありました。もはや評価に手心を加えたというレベルではなく、完全に宣伝です。これは新聞社としてほめられたやり方でないばかりか、自身の公平性や中立性を自ら貶めるものです。私は本件をきっかけに、産経新聞の記事を一切信用しなくなりました。その意味では朝日KY事件にも匹敵します。その事実を決して闇に葬らないため、ここに評価を引用しておきます。ただし、論評の中身も保存してはいますが、全部引用すると問題になりかねないため(「産経Webに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます」とのこと。出所も明記していますから、転載にはならないはずですが、量が「従」ではなくなる可能性が高いです)、評価の数字(5段階評価)の部分のみ引用しておきます。
 このように、ここで取り上げる「中学校公民 教科書の通信簿」「中学校歴史教科書の通信簿」、あるいは今までの自らの誤報を「戦争に大義などない」と開き直るといった、いい加減極まりない記事や報道が自ら評価を貶めていることを、マスコミ各位が自覚されることを願います。
 評価は「学習指導要領準拠度評価」だそうです。実際には、各項目ごとに産経新聞の解説と、産経にとって都合の良い論客の主張が入り、その下に評価が書かれています。

「中学校公民 教科書の通信簿」より

権利と義務
日本書籍   ★★☆☆☆
東京書籍   ★★☆☆☆
大阪書籍   ★★☆☆☆
教育出版   ★★★☆☆
清水書院   ★★★★☆
帝国書院   ★★☆☆☆
日本文教出版 ★★☆☆☆
扶桑社    ★★★★☆

天皇
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★☆☆☆☆
大阪書籍   ★☆☆☆☆
教育出版   ★★☆☆☆
清水書院   ★☆☆☆☆
帝国書院   ★☆☆☆☆
日本文教出版 ★★★☆☆
扶桑社    ★★★★★

国旗・国歌
日本書籍   ★★☆☆☆
東京書籍   ★★☆☆☆
大阪書籍   ★★☆☆☆
教育出版   ★★★☆☆
清水書院   ★★★☆☆
帝国書院   ★★★☆☆
日本文教出版 ★★☆☆☆
扶桑社    ★★★★★

安全と防衛
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★☆☆☆
大阪書籍   ★★★★☆
教育出版   ★★★☆☆
清水書院   ★★★☆☆
帝国書院   ★☆☆☆☆
日本文教出版 ★★★★☆
扶桑社    ★★★★★

愛国心
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★☆☆☆
大阪書籍   ★★☆☆☆
教育出版   ★☆☆☆☆
清水書院   ★★☆☆☆
帝国書院   ★★☆☆☆
日本文教出版 ★★★☆☆
扶桑社    ★★★★★

「中学校歴史教科書の通信簿」より

神話・伝承
日本書籍   ★★★☆☆
東京書籍   ★★★☆☆
大阪書籍   ★★★☆☆
教育出版   ★★★☆☆
清水書院   ★★★☆☆
帝国書院   ★★☆☆☆
日本文教出版 ★★★☆☆
扶桑社    ★★★★★

古代国家
日本書籍   ★★★☆☆
東京書籍   ★★★☆☆
大阪書籍   ★★★☆☆
教育出版   ★★☆☆☆
清水書院   ★★★☆☆
帝国書院   ★★★★☆
日本文教出版 ★★★☆☆
扶桑社    ★★★★☆

明治維新
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★★☆☆
大阪書籍   ★☆☆☆☆
教育出版   ★★☆☆☆
清水書院   ★★☆☆☆
帝国書院   ★★★☆☆
日本文教出版 ★☆☆☆☆
扶桑社    ★★★★★

大日本帝国憲法
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★★☆☆
大阪書籍   ★★☆☆☆
教育出版   ★★★☆☆
清水書院   ★★☆☆☆
帝国書院   ★★★☆☆
日本文教出版 ★★☆☆☆
扶桑社    ★★★★★

日露戦争
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★☆☆☆
大阪書籍   ★★★☆☆
教育出版   ★★☆☆☆
清水書院   ★★★☆☆
帝国書院   ★★★★☆
日本文教出版 ★★☆☆☆
扶桑社    ★★★★★

第2次世界大戦
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★☆☆☆
大阪書籍   ★★☆☆☆
教育出版   ★☆☆☆☆
清水書院   ★★☆☆☆
帝国書院   ★☆☆☆☆
日本文教出版 ★☆☆☆☆
扶桑社    ★★★★★

歴史上の人物
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★☆☆☆
大阪書籍   ★★☆☆☆
教育出版   ★★☆☆☆
清水書院   ★★☆☆☆
帝国書院   ★★★☆☆
日本文教出版 ★☆☆☆☆
扶桑社    ★★★★★

歴史への愛情
日本書籍   ★☆☆☆☆
東京書籍   ★★★☆☆
大阪書籍   ★★☆☆☆
教育出版   ★☆☆☆☆
清水書院   ★★☆☆☆
帝国書院   ★★★☆☆
日本文教出版 ★★☆☆☆
扶桑社    ★★★★★

 私は「イデオロギー論」や「自虐史観」などといった議論には興味がありませんし、この「通信簿」問題がそのような論点にすり替わるのも望みません。しかしながら、新聞社が自らのグループ企業の教科書を不当に評価した事実を見過ごすわけにはいきません。
 使用できるリソースは有限です。有限のリソースから無限の効果は取り出せません。もし全項目において他社を凌駕しようとするなら、リソースを増やすしかありません。もし扶桑社がこれほど驚異的な教科書を作ったのであれば、その分量は百科事典並みになっていなくてはなりません。さもなくば、「あちらを立てればこちらが立たず」です。つまり、上記のような評価の教科書は物理的に作れないのです。
 扶桑社は4が2つ、それ以外はすべて5で、他の教科書は全社・全項目あわせても4が5つ、5に至っては0というのは、不当な宣伝でなければ何なのでしょう。これが同社の体質なのでしょうか。